義兄(あに)と悪魔と私
わき上がる嫌悪感。
あろうことか、つい先程永遠の愛を誓ったばかりのその場所で。
(気持ち悪い……)
吐き気と目眩に襲われてその場でうずくまる。
他のことは何も考えられない。
ただ、嘘だと言って欲しかった。
「大丈夫!? 気分悪い?」
私を我に返したのは、隣の男子トイレから出てきた比呂くんの慌てた声だった。
「だ……大丈夫」
急いで頭の中を切り替えて、なんとか弱々しくも微笑んでみせる。
「本当に? 真っ青だけど」
「貧血……かな? もう大丈夫」
依然心配そうな比呂くんを安心させるため、私は立ち上がって服のホコリをはらった。
「ごめんね、びっくりさせちゃって」
「本当だよ。俺、トイレで何か見たのかと思った」
瞬間、心臓がドキンと跳ねた。