義兄(あに)と悪魔と私
「何って……」
「血の繋がらない妹だから? 違うだろ。あの比呂が嫌うって、よっぽどだぞ」
「……ごめんなさい」
何故か瀬戸くんの言葉を頭の中で反芻してしまう。
どうして謝ったのか、自分でもよくわからなかった。
「謝るってことは、心当たりがあるってことだな」
瀬戸くんの顔が険しくなる。
こちらの方へと詰め寄ってくるから、私は後退りする。
しかし、二、三歩下がったところで、すぐに後ろが壁だと気づいた。
「話せよ」
何を話せというのだろう。
母の不倫? 私と比呂くんの身体の関係?
言えるわけない。
「瀬戸くんには関係ない。だからこそ比呂くんは話してないんじゃないの」
「あいつは昔から、本当に辛いことは言わねぇんだよ。母親が自殺した時だって――」