義兄(あに)と悪魔と私
 
男子メンバー二人の殺伐とした空気は、麻実と合流した後も変わらなかった。

その上、麻実が比呂くんにべったりだったので、私は瀬戸くんの話し相手になるしかなかった。

「すごーい! お札で真っ白!  有坂くん、もっと近くで見よっ」

京都の名だたる文化財を一通り見た後、私達は縁切りで有名な神社にやって来た。

境内にある参拝者のお札が貼られつくした石目指して、麻実が比呂くんの手を引いて、どんどん先を歩いていく。

「あの石をくぐってお札を貼るんだって」

後に残されたのは私と瀬戸くん。昼食の後からずっと続く微妙な空気の中、私は沈黙に耐えられず口を開いた。

「そうすれば悪い縁を切って、良い縁を結べるらしいよ」
「……ふーん?」

瀬戸くんの反応は薄い。

「男の子ってあんまりそういうの興味ないかな。あはは……」
 
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