義兄(あに)と悪魔と私
午後七時。ルート散策を終え宿泊先のホテルについた私達にしばしの自由時間が与えられた。
ようやくあの班から解放され、心も軽くなる。私は極力、麻実と比呂くんのことを頭の中から排除することで、心の安定を保っていた。
「ここのホテル、露天風呂があるんだって。行ってみようよ」
部屋ついて荷物をほどきながら、麻実に声をかける。
「ごめん。このあとちょっと約束があって……先行っててもらっていい?」
返ってきたのは、申し訳なさそうな返事。
私はすぐに気づいた。
「……分かった。もしかして……有坂くん?」
「うん……」
言って、麻実は恥ずかしそうに目を反らす。
「そっか。じゃあ後で」
早々に風呂の準備して、逃げるように部屋を出た。
風呂への道を足早に歩きながら、不安になる。
私はちゃんと笑えていただろうか。