義兄(あに)と悪魔と私
彼は私を犯した凶悪な悪魔。
幸せを壊した最悪の悪魔。
ヘドが出るほど大嫌いで。
殺したいほど憎らしくて。
永遠に、死ぬまで、絶対、許さない。
必死にそう頭の中で繰り返したけれど、いつの間にかどこかへ溶けて消えた。
のぼってゆく意識の中で、自分の知らない自分の声を聞いて、間際に見たのは少し苦し気な比呂くんの顔。
(……綺麗)
端整な顔立ちを歪ませて、私に全てをぶつけてくる彼が、何故か愛しい。
理由など分からない。
もう何も考えられない。
そうして私は、初めて絶頂を迎えた。
次第に戻ってくる意識の中で、ぼんやりと思う。
こんな気持ちは間違っている、と。