義兄(あに)と悪魔と私
この恋は、幻
比呂くんとの行為の後、どうやって部屋に戻ったのかは思い出せない。
けれど、点呼時間のギリギリにようやく戻った私を、心配そうな顔で迎えてくれた麻実を見て我に返った。
「円! どうしたの、顔色悪いよ」
「ごめん、ちょっとお風呂でのぼせちゃって……」
(最悪だ……私)
どうしようもない罪悪感の波が私を襲う。
麻実が失恋して落ち込んでいるその時に、私は。
「じゃあ、今日は早く寝なきゃね。明日元気にいっぱい遊ぶために!」
修学旅行二日目は有名テーマパークでの自由行動の予定だった。
「麻実……あの……私」
「ああ、有坂くんね、フラれちゃった!」
麻実があまりにも明るく言うから、余計苦しくなる。
「好きな子がいるんだって。しかも片想い! これはファンクラブ新情報だよ!」
「片想い……?」
「うん。まぁ……そういうことだから、明日は目一杯遊ぼうね」