義兄(あに)と悪魔と私
待ちに待って、ようやく乗ったコースターはあっと言う間に終わった。
「結構楽しかったね!」
評判通りの面白さに私は満足して、後から降りてきた比呂くんに興奮気味に話しかける。
「え……そうかな」
「もしかして、怖かったの?」
「お化け屋敷って怖いものだろ」
比呂くんの顔はどこか青白く、それもすぐに逸らされてしまう。
意外にも、彼はお化けが苦手らしい。
「ねぇ、一つだけ……いい」
「なに?」
時刻は十四時五十分。集合時間まであと十分。
数時間後には家に戻る。
夢の中のような旅行は終わってしまう。
「今から言うことは、すぐに忘れてね」
「……」
比呂くんは答えなかった。
私は今きっと熱にうかされている。
「……ごめんなさい。有坂良子の娘として謝ります。比呂くんにも、おじさんにも、すごく酷いことをしているって分かってます。申し訳ないって思ってます……ごめんなさい。ごめんなさいとしか言えません。そして、約束守ってくれてありがとう」