義兄(あに)と悪魔と私
悪夢の始まり
それから、慌ただしく日々は過ぎた。
式の後は新居への引っ越しに追われ、気がつけば春休みが終わっていた。
始業式の朝――登校すると、校門から校舎への道は初々しい新入生と部活動の勧誘で溢れていた。
その間をすり抜け、生徒玄関へと向かう。
「円、おはよー」
靴箱の扉を開けた時、麻実(あさみ)が小走りで駆けてきた。
「おはよー」
その姿を見て、私も挨拶を返す。
「今日バスだったでしょ? 見たよ」
「ああ……うん」
「引っ越しても自転車で通えるって言ってたのに、何かあった?」
早速指摘されて言葉に詰まる。
新居に引っ越してから、以前より通学距離が長くなってしまった……のは本当なのだが、通おうと思えば全然通える距離だった。
「……ちょっと寝坊して」
「ふぅん。それよりさ、新しい家どう? 新築なんでしょ?」
麻実には母の結婚ことも、引っ越しのことも全て話している。
ただ一点を除いては。