義兄(あに)と悪魔と私
 
聞いているだけで、吐き気がしてくるほどドロドロした話だ。

「円はどう思う?」
「どうって、なんか昼ドラみたいだね」

言葉を濁すと、麻実は笑った。

「陳腐だよね。だけど多分そういうところが逆にウケてるんじゃないかな。私は少し興味あるんだ。レイプから始まった二人に、脚本家がどんな結末をつけるのか」

麻実の夢は小説家だと聞いたことがある。今も文芸部で色々書いているらしく、着眼点がミーハー女子達とは少し違っているような気がした。

「バッドエンドだよ。レイプとか不倫とか大団円になるイメージが浮かばないし、なっても後味悪いと思う」
「そっか、円もそう思う?」

私は努めて平静を装ったが、激しく脈打つ心臓の音を消すことはできなかった。

「本心では許せないんじゃないかな……結局。たぶん……いや、その女の人がどうかは分からないけど」

でも、好き。そういう感情があることを知っている。
同時に、私は彼を許していないのだとはっきりと自覚した。

だからこそ、この気持ちはここで終わらせるべきなのだ。

どうせ明るい未来なんて、ない。
 
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