それでもあたしは笑う
『はじめまして、愛です』

自分よりも一回りも二回りも上の相手を接客する。

『愛ちゃんねー。可愛いね、若すぎておじさんこまっちゃうよー』

ゆっくりとお尻にてをまわされる。
でも、ここに入って四ヶ月。
かわしかたも随分なれた。
すかさず手首をもち

『この悪ーい手はだれのかなぁー』
ニコッとここで笑えばお客はおこらない。
いやいやーとかいいながら相手も笑う。
そこから少しずつ会話をもりあげて、
『愛も一緒にのんでもいい?』
千円するのみものをねだる。
でも、自分にかえってくるのはたったの百円。
それでもその百円のためにお客にねだる。
ここでしぶるお客なんて、あたしの働いてる地域ではざらにいる。
そして
『ぢゃーなんで愛ちゃんがキャバクラで働きはじめたのか教えてくれたら、おじさん一杯ごちそうするよ』
こうやって条件をだしてくるお客も少なくない。

空いてきたお客のグラスに氷をいれ、
9年前の話からはなしはじめた。




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