灯り
灯り
墨を落としたような暗がり。

不安と心細さからか、キュッと小さな手が、腕にしがみついている。

手探りで這うように、部屋の隅にある引き出しをあけ、蝋燭とライターを取り出した。

カチッという音が、静まった部屋に響く。

蝋燭を近づけると、柔らかな灯りが点った。

こんな小さな手元を照らすだけの灯りでも、心が和む。

泣くのを堪え、しがみついている小さな手が緩んだ。

昼間、倒れた電柱や壊された家や塞がれた道を見た。

竜巻で飛ばされた屋根瓦、割れた窓ガラス、吹き込む雨風。

それでも、あの震災に比べたら……。


自然の力のあまりの大きさと驚異。

津波や地震で家を流されなかっただけでも、家が倒壊しなかっただけでも……と自分自身に言い聞かせる。


蝋燭を机に固定し、ふと振り返ると安心しきったように、穏やかな顔で眠る顔があった。


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