彼女の首筋にキスマーク。


腕を捕まれる。まるで私を帰さない、とでも言うような態度だ。

彼のその態度に折れて、何?、と彼を見上げる。それでも彼は私の腕を離さない。


「この前のことです。」

「……私誰にも言ってないよ。」

「そうじゃない。」

謝りたいんです、と続ける。


……謝りたい?

「私、気にしてないから、……忘れるから、大丈夫だよ。」

そこまで言って、徐々に目が潤んできたのがわかった。

最近涙脆くなったな、と気付く。これも歳のせいなのだろうか。

それに気付かれたくなくて、彼から目をそらす。その時シャツの襟元が目に入った。今日は真っ白で綺麗だ。


「俺、焦ってたんです。」

声が降ってきた。

「神崎さんが彼氏と別れたって聞いて。……早く俺のものにしないと、また他のやつに取られちゃうかもしれないって。」

「……そんな物好き、いないよ。」

「気付いてないんですか?」

気付いてないとは、どういうことだろう。

なんとなく、私と彼の会話が噛み合っていないような気がして気持ちが悪い。


「とにかく、私誰にも言わないから。だからもう、関わらないで。」

ゆらゆらと視界が歪む。私は何故泣いているのだろう。

何が悲しいのだろう。



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