彼女の首筋にキスマーク。
まるで小さな子供に絵本を読み聞かせるように、彼はゆったりと話す。
「ずっと好きだったんです、それこそ入社した時から。」
「……うそ。」
「本当です。結構わかりやすかったと思うんですけど。」
まぁ、神崎さんは彼氏に夢中でしたもんね、と苦笑いを浮かべ続ける彼の言葉に、顔が熱くなる。
「でもあの日の少し前から神崎さんの様子がいつもと違ったから、もしかしたら彼氏と別れたのかな、と思って。」
「……どうしてわかったの……?」
彼は未だ頬を包んだまま話している。
ぼうっとする頭で彼の話を理解しながら、誰かがオフィスに入ってきたらどうしよう、と考える。
すると私が他事を考えているのがわかったのか、彼がその目を少しだけ細めた。
「だって神崎さん、ずっと着けてたネックレスを外したでしょう?」
彼のその言葉に、驚きの声が漏れた。
「ネックレス……。」
「ほら、あのダイヤの。あれ彼氏から貰ったものだったんでしょう?」
確かにそうだ。あのネックレスは、付き合って丁度一年経った日あの男に貰ったもので。
"今度はダイヤの指輪を薬指にね"なんてクサイ台詞を吐いたあの男に、あの頃は心底惚れていた。