FOREVER FRIEND
キーンコーンカーンコン。
昼休み終了のチャイムが鳴った。
次の授業は体育だった。
4人は着替えを済ませ、体育館に向かった。
今日の授業は『バレーボール』だった。

「はぁー、またバレーかぁ。爪が割れるから嫌いなんですけど~」
「あぁ~、だーるーい」
可南子と明日香が愚痴りながら準備運動をしていたら真美が辺りを見渡しながら言った。

「ねぇねぇ、また大友さんいないんですけどぉ~」
「いつもの事でしょ!あの人が体育の時間にいるの2、3回ぐらいしか見た事ないよ。いたらプレミアだよ」
「いいなぁ~。っていうかズルくない?」
そんな事を愚痴りながら準備運動を続けていた時。

『ズキッ!!!』
あっ、ヤバイ‥‥。
ユリアのお腹に激痛がはしった。
異変に気がついた真美が直ぐに声をかけた。

「ユリア、どうかした?何か急に顔色悪いけど」
「う"ん‥‥多分、生理がきたっぽいんだよね」
「ユリアって、たしか生理痛が酷かったよね?保健室に行ってきた方がいいんじゃない?」
明日香が心配そうに言った。

「えぇー、いいなぁ。授業さぼれる人わー」
可南子が嫌みっぽく言う。
「ごめんね、ちょっと保健室行って薬もらってくる」
ユリアは聞こえていないふりをした。
「一緒に行こうか?」
優しく明日香が言う。
「ううん、大丈夫。ありがとう」

1人で行きたいから‥‥。

「分かった」
「お大事にぃ~」
可南子と真美があからさまに嫌みっぽく言ってきたが、また聞こえていないふりをした。
ユリアは先生に報告してトイレに寄ってから保健室に向かった。

お腹の痛みが少しずつ強くなってきた。
ユリアは保健室まで小走りで走った。

ガラガラガラガラ。
「先生、助けて下さい」
「‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥」
保健室の中は誰もいなかった。

先生いないのかぁ、薬の場所分かんない...。
しょうがない、少しベッドで休ませてもらおう。

ユリアがベッドで休もうと思い近づくと誰かが寝ている事に気がついた。

あれ?この綺麗な髪色って‥‥‥。
......間違いない大友さんだ。

ベッドに寝ていたのはミカだった。

どうしょう‥。
隣のベッドで寝てもいいのかな?
でも、横のベッドで並んで寝るのも気まずいし。
ユリアがどうしようか迷っていると‥‥。

「!?」
ミカがゆっくり起き上がった。

「あっ、すっすいません。起こしましたか?」
「‥いや、別に」
ミカはベッドから下り、椅子に座った。
そして、椅子の上に置いてあった鞄からペットボトルのお茶を取り出し飲んだ。
ユリアはお腹の痛みを忘れ、どうしたらいいのか分からず、只呆然とその場に立っていた。

あぁ~。
凄く気まずい‥‥。
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥。
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥。
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥。


あっ!?そうだ!!コレって、チャンスなんじゃない。
大友さんにずっと言いたかった事があるんだ。

「あの、すいません。私の事覚えてないですか?」
「‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥」
「受験当日、トイレで会いましたよね?その時、中に入れなくて困っている所を助けてくれましたよね?」
「‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥」
「その後、生理痛の薬とお水を鞄の上に置いて行ってくれましたよね?」
「‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥」
「あの時は本当にありがとうございました」
ユリアはミカに向かって深々と礼をした。

‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥。
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥。
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥。
しかし、何も返事がない。

「あの~‥‥」
ユリアが恐る恐る問いかけると...。

「悪いんだけど、人違いじゃない?私には身に覚えがないんですけど?」
「えっ、あぁ‥そうですか。私の人違いだったのかもしれません。すいません」
ユリアは残念そうに謝った。

あぁ~絶対、大友さんで間違いないのになぁ‥‥。
ユリアはまた、気まずくなってしまったので仕方なく、さっきまでミカが寝ていたベッドに座った。

すると突然。

「あなたさ~」
ミカがユリアに話しかけてきた。

ユリアは驚いた。
すぐにミカの方に振りむいた。
ミカは細く綺麗な足をくみ、窓の外を見ながら語り出した。
「前から思ってたんだけど、どうやったらそんな作り笑顔ができるの?」

えっ‥‥?

「本当は面白くもないのに、無理に笑って何が楽しいの?いつもつるんでいる3人のメンバーに気つかってまで一緒にいてしんどくない?」

‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥。
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥。

「そんな『くだらねぇ~友情』何が楽しいの?」

‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥。
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥。
ユリアは返す言葉が思い付かなかった。
自分が可南子たちに対して、している事を的確に指摘されたからだ。

「まぁ、私には関係ない事だけど‥‥」
そう言うとミカは椅子から立ち上がり保健室を出て行ってしまった。

1人残されたユリアは胸がズキズキと痛くなった。ミカに言われた言葉が胸に突き刺さったからだ。

ユリアはベッドに寝ころんだ。ほのかに匂う甘い香り、それはミカの香水の香りだった。

今日まで自分がしてきた事を指摘された事が凄く恥ずかしく、自分が情けなく思えてきた。
何よりミカに言われた事がショックだった。
ユリアの目から涙がこみ上げてきた‥‥。

情けない‥。カッコ悪い‥。
『くだらねぇ~友情』
その通りだよね。
でも、そんな事‥‥分かってるんだ。
分かってるよ‥‥うぅ‥。
ユリアはそのまま泣きながらいつの間にか寝てしまった。

キーンコーンカーンコン。
ユリアはチャイムの音で目が覚めた。
生理痛の痛みはいつの間にか治っていたが、胸の痛みの方がまだ残っていた。

やっぱり夢じゃなかったんだぁ‥。
うん?あれ?私、布団ちゃんと掛けたっけ? 
不思議に思い辺りを見渡した。

「!?」
ユリアは気がついた。
枕の横に『生理痛の薬』が置かれていた事に‥‥。

ユリアは生理痛の薬を手に取り、強く握りしめた。そしてまた、ユリアの目から涙がこみ上げてきた。

「‥‥やっぱり、大友さんなんだ。布団まで掛けてくれてるなんて‥‥。
私、保険室に入ってきてから一言も生理痛なんて言ってないのに‥‥」



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