君影草~夜香花閑話~
「違うわよ。あたしもよく知らないけど。大体頭領が、いくら戦のどさくさだからって、腕を斬り落とされる程の傷を負うと思う?」

「そうね、確かに。羽月も思い込みが激しいからねぇ」

 ゆいも、羽月の言うことは、あまり真に受けていないようだ。

 あきは井戸に立って、剥いた芋を洗った。
 そして、ふと考える。

 そういえば、よく真砂の傍で見かけたあの子はどうしただろう。

 一度真砂に夕餉を持って行ったときに、家にいるのを見かけた。
 多分、自分よりも一つ二つ下の、小さい女の子。

 その前に、ゆいらと川に洗濯に行ったときに、真砂に付きまとっている奴がいることは聞いていた。
 これがそうか、と思ったが、刺客とも聞いたような。

---そのわりには頭領、あの子と仲良さそうだった---

 あきは直接、深成と喋ったことはない。
 だが姿はよく見かけていた。

 ゆいらにけしかけられたこともあり、あきは当時、結構真砂を意識していた。
 が、大抵いつも、真砂の傍には、あの小さな子供がいたのだ。
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