君影草~夜香花閑話~
第十五章
空に丸い月が昇っている。
明るい月明かりが煌々と照らす山の中で、真砂は木の上から屋敷を睨んでいた。
今は、ほとんど息をしていない。
細く微かにしているだけだ。
今顔の前に細い紙を垂らしても、僅かも揺れないだろう。
ここまで気配を消しても、まだ屋敷のすぐ傍ではない。
真砂なら一瞬で入ることの出来る距離ではあるが、相手の力を考えた上での、ぎりぎり近づける距離なのである。
---確かに宴は行われたようだな。向こうの庭のほうの空気が違う---
宴の行われたところが、深成の部屋の前とは限らない。
だが、そう大きくない屋敷だ。
まして深成は、病がちだという。
そうそう離れたところまで、この夜に出向かせることはしないだろう。
---多分、あの辺だ---
真砂は宴で少し乱れている空気の漂う一画から、少しだけ離れた屋根に目星をつけた。
そして、軽く目を閉じると、息を整える。
すでに宴は終わっており、屋敷は静寂に包まれている。
だからこそ、油断出来ない。
真砂は目を開くと同時に、木の枝を蹴った。
空中で一回転し、地面に降りる。
ふわり、と羽根が落ちるように、一切の物音も立てることなく、そのまま築地塀に取り付いた。
中の気配を確かめる。
明るい月明かりが煌々と照らす山の中で、真砂は木の上から屋敷を睨んでいた。
今は、ほとんど息をしていない。
細く微かにしているだけだ。
今顔の前に細い紙を垂らしても、僅かも揺れないだろう。
ここまで気配を消しても、まだ屋敷のすぐ傍ではない。
真砂なら一瞬で入ることの出来る距離ではあるが、相手の力を考えた上での、ぎりぎり近づける距離なのである。
---確かに宴は行われたようだな。向こうの庭のほうの空気が違う---
宴の行われたところが、深成の部屋の前とは限らない。
だが、そう大きくない屋敷だ。
まして深成は、病がちだという。
そうそう離れたところまで、この夜に出向かせることはしないだろう。
---多分、あの辺だ---
真砂は宴で少し乱れている空気の漂う一画から、少しだけ離れた屋根に目星をつけた。
そして、軽く目を閉じると、息を整える。
すでに宴は終わっており、屋敷は静寂に包まれている。
だからこそ、油断出来ない。
真砂は目を開くと同時に、木の枝を蹴った。
空中で一回転し、地面に降りる。
ふわり、と羽根が落ちるように、一切の物音も立てることなく、そのまま築地塀に取り付いた。
中の気配を確かめる。