君影草~夜香花閑話~
しばし壁に張り付いたまま空気を読み、やがて真砂は、するすると裏木戸に近づいた。
木戸の取っ手を確かめる。
僅かな凹凸だが、それで十分。
真砂はそれを睨んだまま、ゆっくりと後退した。
木戸から五間(約9m)ほど離れたところで立ち止まり、一気に地を蹴る。
そして先程確かめた木戸の凹凸に一瞬だけ足をかけると、それを足場に築地塀目がけて飛んだ。
普通は縄をかけて塀を登るものだが、片手の真砂はそれが出来ない。
だからといって素直に木戸を破ると、無駄に敵を増やしかねない。
今も僅かに、かた、と音を鳴らした木戸に、門番をしていたらしい若い武士が近づいた。
木戸を破っていると、そこでの乱闘は避けられなかったが、その頃にはすでに、真砂は築地塀の上を走って、木戸から離れていた。
身を低くして走りながら、真砂はちらりと下を見た。
庭に影が落ちている。
このまま築地塀の上にいるのは危険だ。
深成がいるであろう屋敷の棟まで行くのは、築地塀伝いが最短距離だが、この月明かりではまずい。
そう思ったとき、真砂はいきなり身体を捻った。
肩先を掠めて、小さな手裏剣が飛んでいく。
小さく舌打ちし、真砂は頭から庭へと落ちるように飛び降りた。
半回転して着地すると、そのまま庭木の間をすり抜ける。
少し先で、僅かな足音がした。
木戸の取っ手を確かめる。
僅かな凹凸だが、それで十分。
真砂はそれを睨んだまま、ゆっくりと後退した。
木戸から五間(約9m)ほど離れたところで立ち止まり、一気に地を蹴る。
そして先程確かめた木戸の凹凸に一瞬だけ足をかけると、それを足場に築地塀目がけて飛んだ。
普通は縄をかけて塀を登るものだが、片手の真砂はそれが出来ない。
だからといって素直に木戸を破ると、無駄に敵を増やしかねない。
今も僅かに、かた、と音を鳴らした木戸に、門番をしていたらしい若い武士が近づいた。
木戸を破っていると、そこでの乱闘は避けられなかったが、その頃にはすでに、真砂は築地塀の上を走って、木戸から離れていた。
身を低くして走りながら、真砂はちらりと下を見た。
庭に影が落ちている。
このまま築地塀の上にいるのは危険だ。
深成がいるであろう屋敷の棟まで行くのは、築地塀伝いが最短距離だが、この月明かりではまずい。
そう思ったとき、真砂はいきなり身体を捻った。
肩先を掠めて、小さな手裏剣が飛んでいく。
小さく舌打ちし、真砂は頭から庭へと落ちるように飛び降りた。
半回転して着地すると、そのまま庭木の間をすり抜ける。
少し先で、僅かな足音がした。