君影草~夜香花閑話~
まさか自分に向かって飛び込んで来るとは思っていなかった忍びは、度肝を抜かれて、慌てて立ち止まろうとした。
真砂は武器を構えて立ち向かっていったわけではない。
手には何も持っていないまま、いきなり敵に向かって突進したのだ。
意図がわからず、忍びが狼狽えるのも無理はない。
しかも、敵の眼前に迫っても、真砂はやはり何も構えない。
武器も持たずに、ただ忍びに突っ込んでいった。
驚愕している忍びの目の前で、真砂は僅かに腰を落とした。
忍びが、あ、と気付いたときには、顎に強烈な一撃が打ち込まれる。
速攻で頭突きを、忍びに打ち込んだのだ。
ただ打っただけではなく、下から伸び上るようにして、顎の下から打ち上げた。
忍びの脳みそに、直に衝撃が走る。
忍びは声も上げることなく、その場に頽れた。
真砂は再び庭の端に走ると、庭石を蹴って築地塀を飛び越えた。
そこにいた兵士が、ぎょっとしたように真砂を見る。
「くっ曲者っ……」
兵士が言い終わる前に、真砂は回し蹴りを兵士の眉間に打ち込んだ。
仲間を呼ぶ暇もなく、兵士はその場に倒れる。
きょろ、と周りを見渡せば、目指す棟はすぐそこだ。
が、さすがに屋敷の主の姫君の部屋だけあり、護衛の兵士が多い。
異常に気付いた警護の者が、そこここから集まってきた。
真砂は武器を構えて立ち向かっていったわけではない。
手には何も持っていないまま、いきなり敵に向かって突進したのだ。
意図がわからず、忍びが狼狽えるのも無理はない。
しかも、敵の眼前に迫っても、真砂はやはり何も構えない。
武器も持たずに、ただ忍びに突っ込んでいった。
驚愕している忍びの目の前で、真砂は僅かに腰を落とした。
忍びが、あ、と気付いたときには、顎に強烈な一撃が打ち込まれる。
速攻で頭突きを、忍びに打ち込んだのだ。
ただ打っただけではなく、下から伸び上るようにして、顎の下から打ち上げた。
忍びの脳みそに、直に衝撃が走る。
忍びは声も上げることなく、その場に頽れた。
真砂は再び庭の端に走ると、庭石を蹴って築地塀を飛び越えた。
そこにいた兵士が、ぎょっとしたように真砂を見る。
「くっ曲者っ……」
兵士が言い終わる前に、真砂は回し蹴りを兵士の眉間に打ち込んだ。
仲間を呼ぶ暇もなく、兵士はその場に倒れる。
きょろ、と周りを見渡せば、目指す棟はすぐそこだ。
が、さすがに屋敷の主の姫君の部屋だけあり、護衛の兵士が多い。
異常に気付いた警護の者が、そこここから集まってきた。