君影草~夜香花閑話~
「芋も案外重いからねぇ。どれ」

 傍に散らばった芋を集め、あきに渡すと、捨吉は籠の傍に屈み込んだ。
 そして、壊れた持ち手を見ると、きょろ、と辺りを見回して、一旦森に走っていく。

 そしてすぐに、蔦を一本持ってきた。
 それを使って、器用に籠を直していく。

「ほら。これで使えるようになった」

 直した籠に芋を入れながら、捨吉が言う。
 あ、とあきは我に返り、自分も手に持っていた芋を籠に入れた。

「ありがとう」

 お礼を言って、籠を持とうとすると、あきが持つより早く、捨吉が籠を持ち上げた。

「どこに持っていくの? 厨?」

「あ、うん。……あ、ちょっと待って。落としちゃったから、もう一回洗わなきゃ」

 はた、と気付き、あきは慌てて歩いて行こうとする捨吉の袖を掴んだ。
 そっか、と捨吉も、籠を井戸の脇に置く。
 そして、井戸から水を汲み上げた。

「濡れるよ。離れて」

 言うが早いか、捨吉は、籠に井戸水をぶっかけた。
 慌ててあきが飛び退く。

 次に捨吉は籠を持ち上げ、傾けて水を切った。
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