君影草~夜香花閑話~
「と、頭領……。それは、俺があきを、どう思うかってことですか?」

 祝言の段取りのようだ、と、捨吉は焦るが、そんな捨吉に、真砂は冷めた目を向けた。

「何を考えてるんだ。こいつのように初心(うぶ)い女子でも、返って男はそそられるものなのか、と聞いてるんだ」

 赤くなって、しきりに首の後ろを掻いていた捨吉が、しばし止まった後、ああ、と納得したように項垂れた。
 一瞬で体温が上がったらしく、手の平でぱたぱたと顔を煽ぐ。

「……ていうか頭領。頭領だって男じゃないですか。わざわざ俺に聞かなくても」

「わからんから聞いてるんだ。趣味の問題もあるだろうが」

「そうですねぇ……」

 どっちにしろ言いにくい。
 怪しく視線を彷徨わせる捨吉だったが、真砂の問いを無視するわけにもいかない。
 ちろ、とあきを見、また困ったように、う~んと首を傾げた。

「お、俺のような、まだガキは、慣れた女子は気後れするんで……」

 ぼそぼそと言う。
 若手二人は真っ赤になって俯いているが、真砂は何ら気にすることなく、ふーん、と呟いた。

 真砂はこういう感情の繊細さに欠ける部分がある。
 いくらあきと捨吉がいたたまれなくなっていても気にしない。

「まぁ……重臣というぐらいだから、いい歳だろうが。そんな奴は、どっちがいいのかなぁ」

 どこか呑気に言い、真砂はしばし考えた後、ふぅ、と息をついた。

「二段構えでいくか。千代と、あきで行って来い」

「ち、千代姐さんとですか」

「千代には俺から言っておく。近いうちに、細かいことを打ち合わすがいい」

 そう言い置いて、真砂はいつものように部屋を出て行った。
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