君影草~夜香花閑話~
「そうかい。ま、捨吉は子供のお守は得意だものね」

 千代も特に突っ込まず、意味ありげに目を細めただけだった。
 いまいち『子供のお守』というのが自分のことを指すのか深成のことを指すのかわからず、やはりあきは、曖昧に笑う。

 そこに、真砂が入ってきた。

「大体の手筈は決まったか?」

 言いながら、どかりと座る。
 千代がいそいそと姿勢を正し、あきは手を付いて頭を下げた。

「手筈といっても、相手を見てみないことには、わかりませんわね。ただ今の情報だけ見る限りでは、もしかすると、あきのほうが適任かもしれませぬ」

 千代が澱みなく答える。
 初めこそ任務についての情報共有をしていたが、作戦という作戦は立てていない。
 千代が言った、『相手を見ないとわからない』というのも本音なのだろうが、途中からもっぱら雑談に興じてしまったのだ。

 大したことも話してないのに、意外に千代は、あきのほうがいいと言う。
 真砂が、ちらりとあきを見た。

「ほぅ? 何故そう思う?」

「初心ですから。多分的(まと)は、身分的にも老人に近いでしょう。人によりますけど、そういった殿方は、いかにも慣れてないような娘のほうが、お好きな場合も多いです」
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