君影草~夜香花閑話~
「とはいえ、依頼人から公にはするなとのこと。密書のみを密かに奪うよう依頼されております。屋敷に忍び入っても、派手に斬り合うわけには参りませぬ」
長老が言う。
今は戦が起こりそうなわけでもない。
件(くだん)の屋敷も、お家騒動が起こりそうなだけで、戦の気配はないのだ。
そのようなところで、下手に死人を出せば、いくら公にしたくなくても隠し通せないかもしれない。
平役人ではないのだ。
「密書だけを盗み、あいつらを見つけ出せればいいが……」
そのようなこと、容易ではないだろう。
真砂は、軽く左腕を振った。
怪我をしてから約一年。
傷は塞がった。
だがすっかり治ったわけではない。
左腕全体がまだ疼く感じはあるし、片腕というのにまだ身体が慣れない。
身体の均衡を保つのにも影響は出る。
が、いつまでも静養しているわけにもいかない。
己の力がどれほどになったのかも、知らねばならないのだ。
長老が言う。
今は戦が起こりそうなわけでもない。
件(くだん)の屋敷も、お家騒動が起こりそうなだけで、戦の気配はないのだ。
そのようなところで、下手に死人を出せば、いくら公にしたくなくても隠し通せないかもしれない。
平役人ではないのだ。
「密書だけを盗み、あいつらを見つけ出せればいいが……」
そのようなこと、容易ではないだろう。
真砂は、軽く左腕を振った。
怪我をしてから約一年。
傷は塞がった。
だがすっかり治ったわけではない。
左腕全体がまだ疼く感じはあるし、片腕というのにまだ身体が慣れない。
身体の均衡を保つのにも影響は出る。
が、いつまでも静養しているわけにもいかない。
己の力がどれほどになったのかも、知らねばならないのだ。