君影草~夜香花閑話~
「忍び入るのには、影響はないはずだ。俺が行こう」

 真砂の言葉に、同席していた長老の一人が膝を進めた。

「頭領は、まだ。ただでさえ今は、仲間も少なくなっております。そのような状態で、この上頭領にまでもしものことがあったら、今度こそこの党も、立ち行かなくなりましょう」

「俺の身体のことは大丈夫だ。確かに今まで通り、というわけにはいかんだろうが。だから、一人で行くとは言ってない。捨吉を連れていく」

「あいつだけでは心許ない。俺も行く」

 清五郎が言うが、真砂は首を振った。

「お前は残れ。それこそ、万が一のときのためだ。俺が帰らないときは、お前が頭領として皆を率いていけばいい」

 清五郎が、ぎゅっと口を引き結んだ。
 真砂が頭領として、きちんと皆を導くようになったのは、こういう言葉からもわかる。
 ちゃんと作戦を立て、人員を配置する。

 そして、己自ら動くときは、己の後釜のことまで、きちんと考えているのだ。
 党のことを考えるようになったのを嬉しく思う傍ら、この若さでそこまで考える真砂を、悲しくも思う。

 だが、そういったことは全て、頭領としては正しいのだ。
 長老たちも、それ以上何も言わなかった。
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