君影草~夜香花閑話~
 夕餉は日が落ちてから、自分用に仕留めたもう一匹の兎を調理して食べた。
 一匹丸ごとは多いので、残りは干し肉にしておく。
 厨に皆の分の干し肉を吊るし、やはり自分の分は別のところに吊るす。

 母屋に入ると、そこここから健やかな寝息が聞こえた。
 すでに皆、寝入っている時刻なのだ。

 真砂は暗闇の中で、音なく床を蹴った。
 誰一人起こすことなく、梁に乗る。

 はっきり言って、真砂の部屋はここなのだ。
 いつも寝るときは梁の上。
 今この屋敷の中で、真砂が一人になれるのは、ここだけなのだ。

 真砂は梁の上に寝そべって、目を閉じた。
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