君影草~夜香花閑話~
第八章
その少し前。
真砂は茂みの中で、少し身を起こした。
「……そろそろ刻限だな」
千代に言われた時間を過ぎても、動きはない。
真砂は、出来るだけ神経を尖らせて、屋敷を窺った。
「……出るぞ」
あまりぐずぐずしていて夜が明けても困るのだ。
真砂はそろそろと、築地塀に近づいた。
その後ろを、捨吉がついてくる。
真砂はもう一度屋敷を窺うと、一気に築地塀に飛び乗った。
すぐに通りに降りる。
同じく出てきた捨吉と共に、羽月と落ち合う場所に向かった真砂は、その場所の手前で、走ってきた羽月に出会った。
羽月は真砂に気が付くと、さっと家の陰に隠れた。
「どうした?」
真砂も陰に身を潜め、羽月に問うた。
「あっちのほうから、屋敷の様子を窺ってたんですがね。ちょっと動きがありまして」
そう言って、羽月は屋敷の裏手を指差した。
「今さっき、あきさんが姿を見せたんです」
「何だと?」
答えたのは真砂だったが、その横から捨吉が、ずいっと身を乗り出した。
「え、あきは逃げられたのか?」
真砂は渋面になって、捨吉を押し戻す。
捨吉は慌てて身体を戻した。
が、今にも駆け出しそうなほど、身体が前に傾いでいる。
真砂は茂みの中で、少し身を起こした。
「……そろそろ刻限だな」
千代に言われた時間を過ぎても、動きはない。
真砂は、出来るだけ神経を尖らせて、屋敷を窺った。
「……出るぞ」
あまりぐずぐずしていて夜が明けても困るのだ。
真砂はそろそろと、築地塀に近づいた。
その後ろを、捨吉がついてくる。
真砂はもう一度屋敷を窺うと、一気に築地塀に飛び乗った。
すぐに通りに降りる。
同じく出てきた捨吉と共に、羽月と落ち合う場所に向かった真砂は、その場所の手前で、走ってきた羽月に出会った。
羽月は真砂に気が付くと、さっと家の陰に隠れた。
「どうした?」
真砂も陰に身を潜め、羽月に問うた。
「あっちのほうから、屋敷の様子を窺ってたんですがね。ちょっと動きがありまして」
そう言って、羽月は屋敷の裏手を指差した。
「今さっき、あきさんが姿を見せたんです」
「何だと?」
答えたのは真砂だったが、その横から捨吉が、ずいっと身を乗り出した。
「え、あきは逃げられたのか?」
真砂は渋面になって、捨吉を押し戻す。
捨吉は慌てて身体を戻した。
が、今にも駆け出しそうなほど、身体が前に傾いでいる。