君影草~夜香花閑話~
「お前、ちょっとは女技に慣れたのか?」

 ふと、真砂があきに問うた。
 あきはちょっと頬を染め、俯く。

「あの……。女技を使った初めての指令があれだったもので……」

 慣れるどころか、恐怖心を植え付けられてしまったかもしれない。

「まぁ、お前は女技には向かないと、捨吉も言っていたしな」

 ため息交じりに言う真砂に、あきは、え、と顔を上げた。
 捨吉には女技の基礎を教えて貰った。
 そんなに自分は下手くそだったのだろうか。

「あ、あたし……」

 恥ずかしさと悲しさで、あきは涙ぐんだ。
 そんなあきを、真砂が訝しげに見る。
 真砂にとっては、あきが何故泣くかなど、わからないからだ。

「頭領っ」

 不意にあきが、キッと真砂を見た。
 涙は溜まっているが、あきにしては珍しく、強い瞳だ。

「あたし、そんなに下手ですか?」

 真砂だって、あきを抱いたことはある。
 真砂のほうが捨吉よりも経験豊富だろうし、捨吉が呆れるほど下手くそだと思ったのなら、真砂だってそう思ったはずだ。

 真砂が、ちょっと眉を顰めてあきを見た。
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