にじいろオフィスの仕事術
事件が起きたのは、それから数日が経ったある日の昼下がりである。
いつものようにお昼ご飯を食べ終えて、誰からともなく仕事をしようかと手が動き始める時間。
希美はデスクにあるカレンダーを見て、そろそろ他部署に頼まれていた調査報告に取りかかろうと思っていたところだ。
下調べはすでに終えていて、あとはそれをまとめればいいところまでやっていた……はずなのに。
「……ない」
思わず呟いてしまったのは、置いたと思っていた場所に資料がなかったからだ。
(嘘でしょ? ここにあったと思ったのに……)
机の上にある書類をぱらぱらとめくり、その所在が確認できないことが確信に変わったことでようやく焦りはじめる。
記憶によれば、集めた資料たちは仰々しいほど大きく《部外秘》のスタンプが押されてあった。
胸が騒がしい。
ないはずがない。
確かに別の業務に追われてここ数日触っていない資料ではあった。
とはいえ、外に持ち出すわけでもないし、誰かに渡した覚えもない。
(まさか、シュレッダー……!?)
顔が真っ青になるほど血の気が引いたのが分かった。
思わず、今も皮肉に稼働するシュレッダーを振り返る。
すると、ちょうど書類を始末していた橋爪と不運にも目が合ってしまった。
「何した?」
問題を起こした前提での入り方である。
しかし、本当に何かした(……かもしれない)人間である今回ばかりは、文句を言えたものでもない。
「なにも……」
目をそらして口ごもるのが精一杯である。
しかしそれで引き下がる橋爪ではないことは、容易に想像がついた。
いつものようにお昼ご飯を食べ終えて、誰からともなく仕事をしようかと手が動き始める時間。
希美はデスクにあるカレンダーを見て、そろそろ他部署に頼まれていた調査報告に取りかかろうと思っていたところだ。
下調べはすでに終えていて、あとはそれをまとめればいいところまでやっていた……はずなのに。
「……ない」
思わず呟いてしまったのは、置いたと思っていた場所に資料がなかったからだ。
(嘘でしょ? ここにあったと思ったのに……)
机の上にある書類をぱらぱらとめくり、その所在が確認できないことが確信に変わったことでようやく焦りはじめる。
記憶によれば、集めた資料たちは仰々しいほど大きく《部外秘》のスタンプが押されてあった。
胸が騒がしい。
ないはずがない。
確かに別の業務に追われてここ数日触っていない資料ではあった。
とはいえ、外に持ち出すわけでもないし、誰かに渡した覚えもない。
(まさか、シュレッダー……!?)
顔が真っ青になるほど血の気が引いたのが分かった。
思わず、今も皮肉に稼働するシュレッダーを振り返る。
すると、ちょうど書類を始末していた橋爪と不運にも目が合ってしまった。
「何した?」
問題を起こした前提での入り方である。
しかし、本当に何かした(……かもしれない)人間である今回ばかりは、文句を言えたものでもない。
「なにも……」
目をそらして口ごもるのが精一杯である。
しかしそれで引き下がる橋爪ではないことは、容易に想像がついた。