【完】立花くんは愛し方を間違えてる。



「っ……!?」


「なぁー、成田、こっち向けよ」




な、なに!?


立花くんがわたしの髪を一房、二房ととっていじってくる。


見えないところで髪を触られるのが、くすぐったい。



「……やだよ。向かないよ」



「……ふーん。とりあえずなんでもいいけど、今日も教科書見せてな?」



「は? はあぁ?」




また忘れたの!?


……いや、と言うよりも。




「また忘れたフリするんだ……」




立花くんのほうを見るのは、なんか癪だから。


反対側の、窓のほうを向いたままそう言ってやった。



……他の子が隣だった時はちゃんと持ってきてたじゃん。


なんで、また忘れたフリするの……。



嫌がらせなの?


わたしを好きなんじゃないの!?




「……。忘れたフリだって、なんだってするよ。俺は」




え……?



低めのトーンでそう囁かれたかと思うと。


髪をすく指が、少しだけ、耳に触れて、熱を帯びる。



< 123 / 245 >

この作品をシェア

pagetop