【完】立花くんは愛し方を間違えてる。
「っ……!?」
「なぁー、成田、こっち向けよ」
な、なに!?
立花くんがわたしの髪を一房、二房ととっていじってくる。
見えないところで髪を触られるのが、くすぐったい。
「……やだよ。向かないよ」
「……ふーん。とりあえずなんでもいいけど、今日も教科書見せてな?」
「は? はあぁ?」
また忘れたの!?
……いや、と言うよりも。
「また忘れたフリするんだ……」
立花くんのほうを見るのは、なんか癪だから。
反対側の、窓のほうを向いたままそう言ってやった。
……他の子が隣だった時はちゃんと持ってきてたじゃん。
なんで、また忘れたフリするの……。
嫌がらせなの?
わたしを好きなんじゃないの!?
「……。忘れたフリだって、なんだってするよ。俺は」
え……?
低めのトーンでそう囁かれたかと思うと。
髪をすく指が、少しだけ、耳に触れて、熱を帯びる。