【完】立花くんは愛し方を間違えてる。
9.なんだか遠いよ、立花くん。
───翌朝。
まるで昨日の雨が嘘のように晴れ晴れとした天気。
あんな別れ方したから、立花くんと顔を合わせるのがめちゃくちゃ、気まずい……。
もう、来てるかな?
なんて、教室の中を覗くとまだ登校していないみたいで、その席に姿はない。
わたしはなんだかホッとして、自分の席についた。
「おはよ~、くるみ。今日はやけに早いじゃん」
「うん。…まあね」
前の席から後ろを振り返って話しかけてくる花鈴に、“立花君と顔を合わせるのが気まずくて”だなんて、言えない。
はは、とごまかしてやり過ごす。
「あ、立花くんもおはよー」
「……っ」
そんなとき。花鈴がわたしの斜め後ろあたりに視線を向けながらそう言ったから。
わたしは思わず背筋を伸ばした。
「……はよ」
眠いのだろうか、気だるげな声。
「どうしたの立花くん、あくびなんてしちゃって。寝不足?」
「まあな。そんなところ」
普段とあまり変わらないように聞こえるその声を聴くだけで、心臓がおかしなリズムを刻み始める。