【完】立花くんは愛し方を間違えてる。
なんだか、すごく立花くんを知ってるような言い方。
それに、下の名前で呼んでるのも、親密そうだし……
もしかして……
「……成田?」
「ハッ! え、な、なに?」
頭の中にある一つの可能性が浮かんだ瞬間、その声で現実に引き戻される。
あ、いつの間にか数学準備室まで来てたんだ……。
「なんだよ、ボーッとして」
「あ……ご、ごめん。なんでも、ない」
「ふーん」
訝しげにしながら、準備室の扉を開けて中へと入って行く立花くん。
……もやもやする。胸のところが。
立花くんがあの子に優しくしたり、あの子が立花くんの名前を呼んだり、わたしの知らない立花くんを知っているのかと思うと───
って、わたしはなんて心が狭いんだろう……。
こんなの、立花くんに知られなくない。
こんな、醜い感情。