【完】立花くんは愛し方を間違えてる。
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きょ、教科書……忘れた……。
───まさか、さっきの宣言をもう撤回することとなるとは。
自分でも夢にも思わなかった。
ていうか、わたしの高校生活史上、初の忘れものだ。
なんで、よりによってこんな日に……。
───いや、まだ間に合うかもしれない!
今からダッシュで隣のクラスの子に借りに行けば……
キーンコーンカーンコーン……
「おい、どこ行くんだよ。もう本鈴鳴ってるぞ」
無常地も鳴り響くチャイムの音。
そして、悪魔の声。
勢いよく立ち上がっていたわたしは、すとん、とそのまま倒れるように席に着いた。
お、終わった……。
次の授業は、数学。
よりによって、一番怖い先生の教科。
だから、教科書を持ってないことをなんとか誤魔化して1時間、なんてのは絶対に無理だ。
しかもそれ以前に……
「成田ー、教科書よろしく」
問題は、そう、立花くんなの!!
っていうか、よろしくってなに!?
もう忘れてるの前提なの?