【完】立花くんは愛し方を間違えてる。
よく目を凝らすと、成田の体に重なってなにか、毛のようなものが見えた。
毛……?
ああ、もしかしてあの時のネコか。
前にも一度、俺とあいつが雑用係をやってた時にここで出会ったデブ猫だ。
けっこうかわいい。
……にしても、ネコと喋ってんのか? あいつ。
面白いから、少しだけ見ていよう。
むくむくと湧き上がる悪戯心を抑えきれず、俺は再び物陰に身を隠しながら耳をすませた。
「……でね、付き合うことになったんだよね」
ん? 付き合う?
もしかして、俺の話してんの?
「最初はきらいだったのにさー……分かんないもんだよね」
たしかに、最初の頃俺は成田に嫌われていた自覚がある。
だけど、今は好きなんだろ? 俺のこと。
忘れろよ、んな昔のこと。