【完】立花くんは愛し方を間違えてる。




そう思った俺は、ついつい意地悪なことを口に出してしまう。



『そう思うくらいだったら、昨日貸してくれればよかったのに』




って。口に出してから、何言ってんだって気づいた。


俺、こういうこと言うキャラだっけ?




『はは……そう、だね。後悔するくらいなら、言えればいいんだけど、』



『……』




って、自信なさげに笑うのが印象的だった。


別にもっと堂々としてればいいのに。



オドオドしてるから、なんか平凡に見えんだよ。


しゃんと胸張ってれば、それなりに可愛───




『……!』



って俺、何考えてるんだろ、ってその時思った。


とにかく、この子は別に薄情なわけじゃなくてただ、内気なだけってことね。




なんて思いながら、その日の試験を終えた。




最後に消しゴムを返そうとしたら、もうその子はいなかった。




『……やっぱ薄情じゃん』




ぎゅっと消しゴム握りしめて、ぽつりと呟いた俺の声だけが教室内に響いた。




これが、俺と成田の、出会い。




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