【完】立花くんは愛し方を間違えてる。
「……バカ成田」
空き教室で一人、残された立花くんがこんなことを呟いているなんて全く知らずに。
わたしはひたすら走る。
「はぁっ……はぁっ」
慌ててトイレに駆け込んだときに、一瞬。
鏡に映った自分の姿が見えた。
───顔が真っ赤なのは、走ってきたから。
心臓がバクバクうるさいのだって、そう。
全部全部、走ったせいなんだから。
「……立花くんの、ばーか」
わたしだってたまには、言ってやる。
ばーか、って。
面と向かっては言えないけど。
「……」
本当に全力で走ったせいもあり、心臓がはちきれそうに痛い。
こんなにドキドキしたのは、はじめてだ。
そして、こんなよくわからない感情になるのも。
……なんで、どうして、あんなにいじわるな立花くんなんかに。
あんなこと、されなきゃいけないんだろう。
そして。どうして───
わたしはこんなにも、
心揺さぶられてしまうんだろう。