社長に好きだと言われたら
第一章
なんで私が取引なんか‥
「嶋倉凛々。」
私の直属の上司はいつもとは
少し違う強張った顔で見ている。
明日の資料のことであろうか?
「はい、明日の資料ならもう…」
「い、いや‥明日の会議は無くなった。」
明日は大切な会議があるから
くれぐれも資料を完成させてくれ
と口うるさく言っていた上司が
深妙にそう言った。
何故、という言葉を凛々が
発する前に上司は再度口を開いた。
「倉嶋凛々‥お前には明日コラボ商品の取引に立ち会って貰う。」
凛々の時は一瞬止まり
それから、うええええと
声をあげそうになるくらい、
それくらいの非日常。
だってだって大企業ではあるが
とても小さな部署で一応立案部だが
主に商品に付けるポップの
デザインを決めるなど
地味ーーーーな仕事なのだ。
小さな部署にも、話が伝わる
くらいそのコラボは大きな話である。
子供向けのお菓子を作る
うちの会社と、同じくらいの
大企業であるおもちゃメーカーとが
コラボして商品を出すのだが
見込まれる利益はお菓子を
売るのがみみっちく感じる程だ。
「な、何故私‥が‥?」
もちろんそのコラボ企画の
取引に凛々がプラスになると
思ったからの決定だろうが、
そもそも凛々にそんな取り柄はない。
色として置くのか?
それにしてももっと華やかで
可愛い子が大きな部署にはいる。
ポップのデザインがかわれたのか?
いやいや、凛々が行うのは
せいぜい文字のレタッチくらいだし‥
色々な言葉が駆け巡るが
上司から出るであろう言葉が
とりあえず怖い。
「‥‥‥俺も知らん。上からの通達だ。
‥‥‥ただ、これはチャンスだ。」
皆まで聞かなくとも凛々には
この言葉の意味がわかる。
だってこんな機会を凛々達の
小さな小さな立案部は待っていた。
いつか大きな結果を出して、
せめてパッケージを受け持つ
くらいには大きくなりたい!!
そのために、この通達は
大きなチャンスだ。
きっと失敗したらもうしばらくは
ポップ作りの毎日だろう。
凛々は自分がそんな企画に
混ざれた不気味さとやらねば
という決意と、失敗したら‥
という恐怖でいっぱいでは
あったがその中でもやってやろう
という決意に凛々の心は
駆られたのだった。