フラワーガーデン

第8節 誘拐事件

ボストンに来てから、ダディとマミィは勉強に追われて、僕と過ごす時間が少し減ってしまった。

だからかもしれないが、ダディは僕に中国人のナニーを雇うことに決めた。

背がヒョロリと高く、痩せて目が一重のその女性を僕は「スーチン」と呼んでいた。

一見、神経質そうな40代くらいのその女性は、聡明で心の穏やかな人だった。
だから僕は彼女のことが大好きだった。

僕は少しでも早くもっとスーチンと色々話したくて、一生懸命中国語を覚えようと努力した。

そのためか半年もする頃には片言の上海語を話せるようになっていた。