【完】午前0時日付が変わっても
温もりに包まれた私は驚きのあまり、なにも反応できなかった。
千景くんに抱きしめられる感覚とは全然違う。
硬直している私に、腕はそのままで先輩が静かに話し始める。
「百瀬さんの彼氏、俺じゃダメ?」
「……え?」
「好きなんだ」
「せ、先輩の好きな人って……え? あの、えっと」
「百瀬さんだよ。言おうと思ったけど、隠してた」
ーーうそ。
そんなこと……。
『先輩は好きな人とかいますか?』
『うん、いる』
『そうなんですか! 私なにもアドバイスとかできないかもしれませんが話聞くことならできるので!』
『うーん……アハハ、ありがとう』
いつかの学校の帰りに公園に寄った時の先輩との会話。
あの時、ありがとうって笑ってたけど寂しそうに見えたそれは気のせいなんかじゃなかったんだ。