【完】午前0時日付が変わっても
はい、と向けられたその手のひらに自分のを滑り込ませる。
千景くんは軽く笑いながらしっかり握ってくれた。
千景くんを見ると、なぜか下を向いていて私は綺麗な鼻筋を見つめることに。
なに、見てんだろ。
…繋いだ手?
手汗やばいのかな私。
それとも夏なのにカサカサしすぎて女子力疑われてるかな……。
「手を繋ぐだけで嬉しいって思うの初めてだな」
意外な言葉が、ぽつりと。
すっと視線をあげたその瞳に捉われたように目が離せない。
意識を完全に持っていかれる。
心を奪われる感覚ってこんななのかな。
「あっ、走れば間に合う!」
「待って〜」
通り過ぎて行った人の声にハッとする。
ぼけっとしてた…というか、千景くんに見惚れてた…。
信号待ちしていたはずなのに。
二度目の信号待ちって。