【完】午前0時日付が変わっても
「てか……何食べたいのか言われなかったな。よし、千景くんが嫌いなものいっぱい入ってるやつにしよ〜っと!」
ちょっとしたイタズラ心が働く。
制服のポケットに手を入れて、コンビニまでの道をゆっくり歩き出した。
駅がある方に向かって歩いているから、車や人とすれ違うことは多い。
真っ暗で何か出そうな感じだったら怖いけど、全然そんなことない。
春の夜の空気ってこんな感じなんだ。
夜に一人で出歩くことなんてなかったからなんか、新鮮だ〜。
20時以降に外出しないからな。
このことパパに知られたら怒られるなぁ……。
「ありがとうございましたー」
コンビニ店員さんの声を背にお店を出て、来た道を戻る。
千景くんの嫌いなものを買おうと思ったけど、よく考えてみたら私、千景くんのことあんまり知らなかった。
知ってるのは名前と誕生日と……ちょっと意地悪な性格で、だけど本当は優しいってことだけ。