昨日の友は今日の恋人!?~甘い視線で迫られて~
これが社内恋愛の大変さってヤツだろうか。

きっと『それは私の男よ』って宣言できたらいいんだろうけど、やきもきしながら嫉妬心を募らせていても、建前の顔がそれをさせない。

桜の大人女子の意地は、強くて少し切ない。

「あ~あ。奏多君に遠慮しないで、紫乃を誘えばよかったかな。紫乃って土曜日、なにしてた?」

「先週の土曜は……奏多のフットサル見に行ってた」

「フットサル!? 奏多君って、いまだにやってるの? ってか、よく紫乃が行ったね~。彼氏の友達に会うのとか、やたら〝緊張しい〟なのに」

よく分かっていらっしゃる。長い付き合いは伊達じゃない。

私は気恥ずかしさを隠すように、店員さんが届けてくれたハラミを焼き始める。

「……奏多ってさ、なんか知らないけど賭けるの好きなんだよね」

「賭け?」

「賭けって競馬とかスロットじゃないよ? なんか決めるとなると『じゃ、賭ける? 勝負しよっか』ってなるのよ」

「ああ、紫乃限定の賭ね。他のひとに言ってるのは聞いたことないし」

賭けることでスリルを求めているのか、それとも互いに公平なチャンスをつくるためなのか。

その内容はデートコースから缶コーヒーを買うにいたるまで、大小さまざまだ。

例えば『どちらがお茶を入れるか』なんて、たったそれだけのことでも勝負しようと、指相撲の手を出してくる。

そんなところが意外と子供っぽくてかわいい。そう、奏多のクセにかわいいのだ。
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