昨日の友は今日の恋人!?~甘い視線で迫られて~
本当はお茶を入れるくらい全然オーケーなのに、屈託のない笑顔を見たくて、つい勝負に乗っかってしまう。いつも奏多にしてやられるのに、私も懲りない女だ。

奏多のことを思い出しほっこりしてる間に、桜は飲み干したビールのお代わりを注文している。

店員さんがいなくなると、それで? と話の続きを促した。

「その勝負がね、負けるたびに不意打ちをくらうの。心臓に悪いヤツ」

「賭けの中身って決まってないの?」

「だからその中身もいろいろあって。この間なんか『負けた方がなんでもいうことを聞く』って、賭けた」

「な~んか無謀。で、なに勝負?」

「ダーツ」

「ダーツって。紫乃、そんな特技持ってたっけ?」

桜はビールと焼き肉の熱気でピンクに染まった顔をキョトンとさせる。

「ないですよっ。だから不意打ちくらったんじゃない」

私はことの発端を桜に話して聞かせた。



先週の水曜日は仕事帰りに奏多と待ち合わせて、メキシコ料理の店に足を運んだ。

電飾が華々しい派手な内装のお店は、スパイスの匂いが充満していて食欲を煽る。

おすすめメニューのビーフファヒータを口にしたときは、そのスパイシーな味わいに思わず笑みが零れた。

おいしい食事を楽しんだ帰り道、駅に向かう路地裏でほどよくさびれたダーツバーがあるのに気づいたのは私だった。それを教えると、途端に奏多の目がキラリと光る。
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