昨日の友は今日の恋人!?~甘い視線で迫られて~
案の定、彼は『紫乃、勝負しよっか』と言い出した。

ダーツ初心者の私が勝てるわけもなかったのに『ハンデをつけてやるよ』の甘い言葉にそそのかされ、おバカな賭けに乗っかってしまった。

今思えば、食事前のすきっ腹に飲んだテキーラベースのカクテルが、私の気を大きくさせたのかもしれない。

で、当然のように勝った奏多は、ニヤニヤしながら私の耳元で囁いた。

『今度の土曜、フットサルの試合に差し入れもってきてよ』

『は? ……それでいいの?』

『それがいいの』


すっごいセクシーな恰好でデートにきてとか、私の苦手なホラー映画を三本立てで見ようとか、奏多のことだからそんな無理難題をふっかけてくるのかと予想してたのに。

彼の望みが思いのほか健全だったことに拍子抜けしてしまい、その場ではつい『うん』と頷いてしまったのだ。

いろいろと気が付いたのは、家に帰ってからだった。

私のなかでは、奏多とサッカーボールが全然結びついていなくって。

話には聞いていても今まで一度も覗いたことのない、私が知らない奏多の世界。

いつかは見てみたいと思ったけど自分から恋人のコミュニティに飛び込むのって、勇気がいる話だったりするのだ。

奏多の友人たちに、歴代の彼女と比べられたら嫌だなというのも微妙に腰がひける一因で。

これだけ年を重ねればそのくらい当たり前なのは分かってる。自分のことは棚に上げて、なんてつもりもない。でも、漠然とモヤッとするのが永遠の乙女心ってものでしょ。
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