ミステリー
理代は学校から家までの途中にある市立図書館に入った。


図書館で今日の宿題を済ませてしまおうと思ったのだ。


適当に開いている席に座り、
数学の宿題プリントに手を付ける。



理系科目はあまり得意ではないが
今日の宿題は、いつもよりはややこしくなかったため、
割とすぐ終わった。


それから、理代はカバンから、この間行われた、筆記模試の答案用紙と解説の冊子を取り出した。この間の筆記模試は、少し調子が悪く、国語47点、数学51点、英語66点であった。
(英語は逆さにすれば99点だなあ、と理代は心の中でつぶやく。)
おまけに、この間の化学の試験は42点で、クラスでたった1人赤点だった。

(中学時代まで、英語は、割と自信あったんだけど、下がってしまった‥)

ちなみにエルは、この間の筆記模試で、
国語99点、
数学98点、英語96点と、
偏差値はゆうに70をこえていた上
県内でも20番以内だった!

エルが試験でしくじったのは、せいぜい、
中2の後半の理科の試験で、天気の単元がうまくのみこめず、38点を取った時や、
中3の1回目の実力試験の国語で、49点だった時くらいだが、この時の国語は難しかったため平均もかなり低かった。
そのとき理代は、女神でも転んだり木から落ちるんだなあと思った。



エルちゃんて、頭脳明晰で運動部のエースで、
男子からの人気も高いし、
社交性も高いし
なんでも揃ってるな。
それに自分と弟さんのお弁当も
しょっちゅう、自分で作っているらしいしお料理も上手だな。
(理代も料理の腕は殆ど引けを取らない。
エルの弟も,お手伝いで風呂掃除やトイレ掃除や
窓ガラス洗いなどは、休みの日によくやってくれてるらしい。)

エルちゃんなら来月受ける予定の漢検1級も合格だろう。
まさに、女神に金棒や剣だな、神って本当不公平だな、と理代は思った。


筆記模試の見直しが一通り終わると。


さて、何か読もうかな・・・・
理代が顔を上げ、席の前の本棚の本に目をやると。


理代の目の前に、聖城高校の制服
―水色のワイシャツ、青のネクタイ、青のチェック柄のズボン―
を着た男の子が一人、歩いてきた。




聖城高校は、理代の家から離れたところにあり、市内で一番成績がいい高校だ。
ちなみに理代の高校は、市内で聖城高校の次に成績がいい。



しかも、彼は
こんな子が同じ町にいたのかしら??
こんな子と会えるなんて・・・
と思うほどの美少年である。


もっと具体的に述べるなら、
全国規模の美少年イケメンコンテストがあったら、
確実に最終選考に選ばれる、
くらいはかっこいい。


『あの、良かったら、俺と、友達に、なってほしいんだ。』

美少年は理代に
感じのいい笑顔で話しかけた。

えっ!!


なぜ、こんな子が、私にわざわざそんなことを・・・・



理代は嬉しくときめく気持ちと、
ほんの少しだけ、
遊ばれるのかな?と疑う気持ちとが混ざった。



『え・・・
私でよかったら、私は
い、い、いいけど。』
と、理代は顔を真っ赤にして答えた。


『ありがとう、俺、とてもうれしい。
俺、中瀧光(なかたきひかる)。
聖城高校の一年なんだ。よろしくね。

友達ができて、うれしい。』

光は花のように微笑んだ。



『私、理代。よろしく。
同じく高校一年よ。』



理代と光は、携帯電話の番号とアドレスを交換し、
図書館を出ると途中まで一緒に帰った。



中瀧君かー
めっちゃかっこいいうえ、感じ良い人・・・・・。
どうして私にわざわざ友達になってほしかったんだろ・・・・


そっか・・・・美少年すぎて、
おまけに成績までいいから、
高嶺の花みたいに思われてて・・・
それでかえって
友達があまりいないのかしら?


理代は幸せな気持ちで家に着いた。
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