ミステリー
一幸は、パンを並べ終わると、店長から声を掛けられた。


『実はさあ、今日から取り扱いが始まる外国製の製品が何品かあるんだが、
その取扱説明書を、簡単に、翻訳してくれないか。
君確か、翻訳家めざし学習中なんだよね、
出来たらお願いしたいんだ、私、語学はさっぱりでね、どうか頼みたいんだ。』


すると一幸は
『わかりました、成田店長。
最善はつくします。』
と返事した。


一幸は成田店長とともに、売り場の裏の事務室へ行き、
成田店長の机の隣の机に座ると、
自分のエプロンのポケットから、電子辞書をだし(英語とフランス語もひける)
成田店長から渡された取扱説明書を、数枚
翻訳し始めた。


取扱説明書のうちの、一枚はフランス語、残りは英語だったが、
一幸は大学時代、第二外国語としてフランス語を履修してたため
フランス語もある程度分かっていたし、
英語のほうは辞書なしで完全に内容が分かった。


三十分もたたないうちにすべて翻訳し終えた。



『成田店長、すべて終わりました。
フランス語のほうは、間違いがないとは言い切れないですが』


と、一幸が言った。

成田店長は、一幸の訳した文にざっと目を通し、それから笑顔になり

『あ、ありがとうよ、たすかったよ、やるねえ!』

と言った。


一幸は嬉しくなった。

と同時に数ヶ月前、友達との遊びのため、電車から降りた後のことを思い出していた。

その駅で。
一幸はむかし意地悪されて虫けら扱いされてた時のトラウマで、
まだ、なんでもない時に急に吐き気や嘔吐およびまたは下痢およびまたは頭痛に襲われることがしばしばあった。
母にパニック障害かもだから治療したいというと
一生薬漬けなるからダメよ
と何回もいわれた。

その電車から降りた直後
友達の待ってる待ち合わせのとこに早くいきたかった。
んでも嘔吐したい。早くトイレにいきたいよ。
んでも嘔吐したく,間に合いそうもなく駅の床に倒れると。 
「どうしたゆきえちゃん?!」
「大変、神重くん、脩くん、燕先輩、
かすみちゃん、まいちゃん
あの人多分具合悪いのよ,多分嘔吐したいのかも」 
「大変や!はよ、助けんと!」かすみと
呼ばれたコ。 
「大変だね,はよう医務室に案内しないと」
と,これまた成績の良さそうな、
眼鏡イケメン。


その、大学生らしい男女が何人か,駆け寄ってきて、
ひとけないところへ連れてってくれ
エチケットふくろ何枚かとティッシュ、ミネラルウォーターのペットボトルとを買ってきてくれ
駅員さんもよんでくれた。

友人にライソで連絡すると
その友人ー浮所くんや福士くんや横浜くん、
紫耀くん、蓮二くん、
弦樹くんが、

慌てて駅の医務室にかけこんできた。


おい大丈夫?むりするなよ、と。
彼らが一幸をどれほど気がかりで心配してたか一目で分かった。
青ざめてて、一幸のために
ドラッグストアから、
酔い止めの薬、下痢止め、ミネラルウォーター、
ストレス軽減用のチョコレート、熱さまシート
などたくさん買ってきていた。

一幸は自分が,未遂でも,
あいつの名前で殺人予告の手紙書いたこと
を情けなく思った。
この人たちみたくなんにも関係ない人にも迷いなく
手を差し伸べられる優しい人のほう
多いのかなあ
このひとたちのように
人にいじめや嫌がらせしない良い人間もたくさんいるのにそんなこと分からなかったなんて俺も馬鹿なことをしようとしてた
馬鹿なことする手前だった
いじめを止めたいなら全国まわって講演会すればいいのに
あの中学の時は分からなかったなあ
と思ったからだ。
あの日、中3の夏休みの八月最後の金曜
金ローに「リトルマーメイド」入ったな。
あの日線路に飛び込み死のうとしたが
リトルマーメイドだけ見たかった、それみたとき
死のうという気持ち少しだけきえたよ。


平野くんたちも、嘉藤くんに紹介されてできた友人だが昔からの友人みたく
優しいし。


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