ミステリー
『私は魔法使いのもとに行き、修行して魔法使いになる前は、普通の娘っ子だった。愛する人もいて、その人と将来結婚したかった。


でもその人、私との結婚、ご両親に反対されていたから、その人、駆け落ちしようって言ってくれたんだ。

だから私、駆け落ちの約束の場に何時間もいて待ってたのにとうとうその人来なかったんだ。
吹雪の中、ずっと待ってても来なかった。

その人はやっぱり、私より、ご両親が見込んだ、町の実力者の娘との結婚を選んだんだよ。
その人もやっぱり、私より自分の地位や出世を選んだんだ。
だから私愛とか絆、信じない・・・・・・・・・・・・』


魔法使いは、話していくうちどんどん悲しげになり、泣き始めます。


『気の毒ですわ・・・』
お姫様が言い、王子様もうなずく。

すると魔法使いの前に、一人の青年が現れます。

よく見ると、その青年の体は透けてます。


その青年は、幽霊です。


『君なのかい?君は・・・・
ごめんね。駆け落ちの約束の場所に行けなかったこと・・・・

駆け落ちの約束の場所へ行く途中、僕、
事故でなくなったんだ。
だから、行けなくって、ごめんね・・・・ずっとそれを後悔していた。』


青年が魔法使いに優しい目を向け、言います。


魔法使いは、ますます泣きます。


『そうだったの・・・・・・・・・・・・そうだったのね・・・・・・・・
誤解、解けて良かった、

そうだったの、ごめんなさい』


泣きながら言う魔法使いを、

青年は、抱きしめました。

青年は幽霊なので魔法使いに触れることはできないけど、

魔法使いはそれでも嬉しそうでした。

そして、次の瞬間青年の姿が見えなくなります。


魔法使いは、先ほどまでの怖い邪悪な目つきじゃなく
とても暖かな目になっていました。



『王子様、あなたに呪いをかけたこと、そしてあなたの国を苦しめたことを、何とお詫びをしていいか、分かりません。』

魔法使いが王子に頭を下げ、謝罪します。


『では、魔法使いさん、この先は良い魔法使いで、あってほしいのです。』


と、王子様とお姫様が言うと、
魔法使いは、そう約束します。
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