ミステリー
「そうだったの。そんなことが」


あやめは少しの間、言葉が出なかった。


「だけど、どうしてわたしに、生まれる前に好きな容姿を選ばせてくれたのかしら?」


あやめの問いに、妖精が少し悲しい目をして、
「それはあなたの前世が、あまりにも悲しく辛く苦しかったから」

といった。


「私の前世?」
あやめは尋ねながら、昨日の夢に出た女の子を思い出す。


「昨日夢に出て来たあの子はわたしの前世かしら?」

あやめが尋ねると妖精が頷く。


「あの子はね、容貌は醜くても、とても性格の良い子だったのよ。
他人に思いやりを持てる、親切でまっすぐな。
だけど、あの容貌が災いして、
昔から、友達に避けられたら嫌われたりしてた。


そしてあの子が中二の時、あの子の隣の席の男子がね
ーでも、その男子だって人目を奪うほどかっこいいわけではなかったしむしろ
残念で冴えない顔だったしー
あの子が醜いってだけで、あの子をいじめたの。




目が腐るとか
空気腐るとか
こっち来るな、とか
この醜い顔死ね、とか
この醜い顔、どっか行けとか
あっち行けよ醜い顔、とか
学校来るなとか
この不細工消えろ死ねとか
じゃまとか
消えろとか
この不細工とか
この醜い顔見たことないとか
消えろこの不細工とか
かなりあの子をけなしてたし
あと、あの子に石をぶつけたりその子の足引っ掛けて転ばせたりもしてた。


それから、あの子が高一のとき、
あの子と同じクラスの、クラス位置綺麗な女の子が、
あの子に聞こえるようにわざと、
あんな不細工が同じ空間にいるなんて嫌だわ、クラスの他の女の子は本当に可愛いのに、あの子だけが空気汚してるから死んで、とか言ったのよ。

あの子は、頑張って自分の両親に恩返ししたいと考えてたけど、そういういじめや侮辱にもう耐えられなくなって
自殺したの」
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