ミステリー
あやめが夢で妖精に出会ってから,時は過ぎ、
新年を迎えた。



20xx年1月7日の午前中のこと。
あやめの家の近所の、
観音堂通りの鵬鳴産婦人科で、
田中家に男の子が,長岡家には女の子が生まれた。


男の子の両親と親戚も、
女の子の両親と親戚も、
ひどくがっかりとしていた。


男の子も、女の子も、
それぞれの美男美女な両親にも親戚にも全く似てない、目を背けたくなるほどの、気持ちの悪い醜い容貌だったからだ、その醜さは生後何日も経つにつれてどんどん際立った。一体身内のうち誰に似たのか,というか、一体どんな生物の遺伝子がはいったのか???と思うような。



その男の子と、その女の子は、前世のあやめをいじめた意地のひどく悪い男子と、
前世のあやめを侮辱し見下し、コケにした女子の、生まれ変わりであった。


妖精は、前世のあやめをいじめた男子と、前世のあやめを侮辱した女子に、前世のあやめの悲しみと傷を理解させるため、
顔形といった、生まれ持ったものを
理由にいじめられたり、辛くあたられる悲しみを
ほんの少しでも、理解させるため、
前世のあやめ以上に、醜く気持ちの悪い容姿で生まれさせた。


その男の子も、その女の子も、
それぞれの両親や親戚から毛嫌いされ、かなり酷く扱われ、邪魔者扱いされ、友達からも嫌われて避けられたし、
道を歩けば大笑いされたり
大げさに逃げられたり避けられたりした。

そして二人とも
中学の時に
それぞれ理科準備室で
硫酸や危険な薬品を事故で被り
全身も顔全体もひどい火傷をおい
顔は特に、原子爆弾を数百回
直接浴びたかのように焼け爛れ、目や鼻や口の位置がどこか,元の顔がどうだったのか,すらも全く全然,わからないほど,
というか本当にかつては人間の顔だったのか??と思うほど,疑うほど
肉がでこぼこに盛り上がっていたー。
自分でもかなり不気味で目を背けたくなるような顔になってしまったー。
それは手術でも治せないとのことだった。

二人とも病室で鏡を見ると
こんな姿や顔で生きてくなら死んだ方いいと言い,鏡を窓から乱暴に投げ捨て
自分も窓から身を投げて死んだ。
どうせこれまで以上,これまでと比べものならないほど差別されたりするだけなんだからー。
差別されても誰も救ってすらくれなかったんだからー。どうせこの世間は差別される痛みがわからない奴の方多いんだからー。少なくても自分の周りは差別される悲しみ痛みを,わからないやつばっかだったわ。生まれて今まで地獄だったな。
火傷を負う前だってそうだったしまるで地獄奈落だった。その二人にとって世間は,毎日は,日々は,人生は真っ暗な地獄そのものとしか言えなかったからだー。言い表せないほどの地獄だったからだ。
その理由はただ一つ,顔がキモい、醜いって理由だったー。
ならばこの姿ではなおさら誰も救ってくれないー。
が、
その二人が死んでも誰も悲しまなかった。
厄介者が死んで保険金に代わってくれてせいせいした、と言い放たれていた。
その2人の人生は,生まれて死ぬまでずっと地獄だった。
顔形が醜い,顔が醜いというだけの、
そんな理由だ。
因果応報とは,存在しうるのだろうー。





「因果応報ね。


他人に意地の悪いことすれば、今度は自分がいじめられたり、辛くあたられたりするのよね」


と、妖精の、かなり冷徹な声が聞こえた。
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