ミステリー
みりが、ゆずの動物カルテを、図書館へ返しに行く途中。


図書館近くの空き地で、同い年か年上くらいの、体格いい男子が3人、小さな野良猫らしき猫をいじめている!
猫の真上で、花火をしたり、猫のしっぽふんだり猫の顔にまでふんづけたり。


みりは、ふつふつと、疑問と憤り、悲しみが湧くのを感じた。
なんていうやつらだろう、
一年前の朋ちゃんの件も腹が立つし
そもそもいじめる奴なんかどこにでもいる!
悪いのは、悪いのは‥
いじめられる側でなくいじめの方なんだ!
改めて感じた。


みりは、ダッシュで空き地へ入り、
男子のうち1人へ体当たりする。
男子たちの方が、腕っ節は強いだろうが
それでも、その猫を、いじめられる猫を
見捨てられなかった。


『わ!』

体当たりをくった男子は尻餅をつく。
他の男子らも驚いて花火を手放す。花火は水たまりの中へ入り火が消えた。


『何してんだい!
その猫、弱ってるでしょーが、みてわからないのか!
何してんのさ、大馬鹿、サイテー、
一度、お前たちもおんなじ目にあえってかんじだ!!』


みりは、半泣き状態で、憤りながら、
いままでないほど大声で
叫ぶ。
一瞬自分でもびっくりした。


他の男子も、体当たりされた男子も
一瞬みりに驚くが

『なんだてめえ、この汚いブサ猫と関係あるのか!
そもそとてめえひとりで俺らとやる気かよ!』

『このブサ猫一匹なんか、どうなってもいいだろう、しかもブサ猫なだけでなく野良猫だし』

体当たりされた男子も立ち上がり、男子たちはすぐに腕を組み、みりをにらみつける。

男子たちは、拳をぽきぽき鳴らしている。
明らかに彼らの方、みりより腕っ節が強そうである。
みりは、
私もやられるかも、と不安になる。
でもこの猫が、一年前の朋ちゃんみたいに、一方的に意地の悪いことされていじめられるのも、もっと嫌だよ。
いじめをとめたひとが次に、いじめられることもざらにある、て聞いたことあるけど
それでも、誰かが、特定のひとだけが
一方的にいじめられるのも、やだな。

心の中で叫び、猫を見つめる。


ごめんよ猫ちゃん、わたし、
ここでヒーローみたいに悪党を勇者ロボットや武器でやっつけたいけど、わたしは、
ゴウザウラーとかガンバルガーや、ライジンオーや、ゴルディラーン(みりの両親が中高生の頃、流行っていた作品で、家にDVDもある)とかじゃないしなー。
ゴルディラーンのヒロイン(ゴルディラーンのヒロインは、柔道も剣道も拳法も、大人とも戦えて勝てるほどの全国クラスの実力者で、年上のいじめっ子男子3人も、軽々持ち上げ、投げ飛ばしてしまい、逆にその日からその子たちを大人しくさせてしまったほどたくましく優しい子で、男女問わずものすっごいモテる。みりも心底、そういうヒロインになりたいと、思ってた)のように、剣道とか柔道もやったことないしなあ。
それか、
別のクラスのプロレス道場の娘さんのように、プロレスでも習ってたら良かったかしら!
最低でもどれか一個、習ってたらよかったかしら、こーゆーときに役立つんだし、または電車内で痴漢にあった時だって役立つだろうな!


みりは、いじめなんかする鬼畜も腹立って仕方ないが、いじめる奴なんかも腹が立つが、同時に、
いじめなんかする鬼畜なんかに、
いじめなんかする最低な鬼畜なんかに打ち勝てそうにない自身もとても非常に情けなく悔しく感じた。ゴルディラーンのヒロインが
うらやましい!
みりも自分への情けなさで、泣きそうなる。こんなとき、いじめなんかする最低な鬼畜へ、ゴルディラーンやそのヒロインや主役のように、たくましく勇敢に立ち向かっていけたら!(これは自分もかつて感じた感情です)

すると、
『アンタたち何やってるんだ!
その子の思い、考えたことがあるのか!』
女性の声。


みりと男子たちが振り向くと。
空き地の反対側の入り口に、
一人のかわいこちゃんがいた。
全国規模の美少女コンテストがあれば、最終選考まで残る7〜8人の中に入る、くらいの
かわいこちゃんである!

『で!し、白石さん!』

男子たちが慌てる。


『白石さん?』


白石と呼ばれた、アイドル級の美少女はつかつかと空き地に入ってくると、
スマホの画面を男子たちに見せた。

『今の最低最悪な鬼畜同然の動画、撮ったから、祖父と母へみせるわ。祖父は警察署長、母は少年課の課長よ!
これが警察に見せられたらあんたたち
少年刑務所行き免れないわ!』

白石さんと呼ばれた美少女は
キレながら怒鳴り、スマホをウエストポーチへしまう。

男子たちはいきなり大人しくなり
白石さんに何回も土下座し謝った。


白石さんは、
男子たちが立つと、順にかるがると、
男子たちの胸ぐら掴み、投げ飛ばした。
それから、男子たちに近づくと彼ら一人一人に、
目にも止まらぬほどの超高速で拳を50発ずつくらわす。

『お前たちにいじめられた側のほうが、おまえたちの何億倍も無量大数かける無量大数倍も、比べものならないくらい悲しんでて苦しんでるって、きづけば!
そんなことも気づかないなんてひととして本当
サイテー』


みりは、傷ついた猫ちゃんを両腕に優しく抱き抱えながら、白石さんすごいなー、と、感心する。
白石さんは、横暴な奴、虐める奴を見て見ぬ振り、しないひとなんだ。そういうひとが少数でもあるから、この世界が、なんとかなっているのね。
そうだ、猫ちゃんを、とりあえず病院連れてこう。


『祖父と母が、柔道と剣道と空手で、全国優勝経験もあるの。そもそもあんたたちみたくいじめる人なんか、本当にたくましいとは言わないわ!たくましいひとならいじめなんかしないのよ!そして動画は祖父と母にみせるからね、そしたら困るのは誰よ!』


白石さんは男子らにそう言い捨て、
みりと猫ちゃんのほうにちかづく。


『あなた、いじめを見て見ぬ振りしないなんて、
すごいのね。たくましく優しい人なのね!』
白石さんはみりに微笑む。

みりは照れた。白石さんに救われたのはむしろ、自分のほうだと思った。


『この猫ちゃんを町の動物病院連れてってから、私警察署行くわ。あいつたちには罰が必要よ、あたしのクラスや他のクラスの子もね、あいつたちにいじめられたひと、片手の指の数で足らないほどなの!いじめが原因で転校しちゃったひともいるくらいで。』
と白石さん。

『白石さん、ありがと、おかげで助かったわ。
あの、わたし、すごくなんかないよ、白石さんが助けてくれてなければわたしも、ボコにされてた。
あの、それはそうと、わたしも病院と警察署ついてっていいかしら?』と、みり。

『麻依でいいわ。あたし白石麻依よ。小4なの。』
と麻依。

『わたし、富山みり、小3なの。やはり、年上なら、白石さんと呼んだほういいかしら』


『別に麻依またはちゃんづけでいいわ。
どーせ120歳、119歳なったら一歳差なんてちいさなものだわ!』
と、麻依。


みりと麻依は、2人で、動物病院に猫を連れてってから、警察署へ行った。
その動物病院では、身寄りがない動物を、引き取り手、里親が見つかるまで、世話をする制度が整っている。


そして、警察に動画を提出されたその三人の男子が、少年刑務所入れられる手前だった。が、ギリギリの線で、それはまぬがれた。
だが、
学校側からもその三人の男子には、当然の如く、無期停学を言い渡され、親や担任、校長にもこっぴどく怒られ、しかも数週間前に学校の女子更衣室に盗撮カメラを仕掛けた件、町の銭湯の女性用の浴室を覗いた件もばれてしまい
それぞれの母親(3人の母親らは、近所でも肝っ玉奥さんと呼ばれて、物凄い勝気で男勝りで勇敢な性格で、昔女子プロレスや拳法や、剣道の全国チャンピョンで、男子とも互角に戦っていた。
しかも、
ごく最近、電車内で痴漢にあった時も逆に痴漢にプロレスやレスリングの技をかけ、痴漢をひいひいおいおいと泣かせてしまったほど。)
からも、ごつん!とげんこつで
なぐられかんかんに怒られた!

今度いじめや盗撮や覗きなんかしたら絶縁する、ずっと少年刑務所や矯正施設にでもいれてもらうから、
いじめはいじめる側が全て一方的に悪いんだから、と
いいわたされたそうな。
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