ダイヤモンドの未来
「明日のこと、説明はしたけど、何か聞きたいことはある?」

「とりあえず、大丈夫です。」

「夜、眠れないようなら、看護師さんに言って眠剤もらって。
オペ前には緊張する人多いし。」

「分かりました。」

「遠慮しないで、ナースコールしてね。」

「はい。」

そして、先生が周りに聞こえないようにするためか、耳元に口を近づけて、私の手に何かを握らせた。

手の中を見ると、ブルーのハンカチだった。

「これ、使ってないから、よかったら持ってて。」

確かに、今、大きな病院では、ありとあらゆる水道の横にペーパータオルが設置されている。手洗い後には、院内感染防止のために、ペーパータオルを使うのがベストらしい。だから、院内でハンカチを使う機会はほとんどない。

「主治医は俺だってこと、覚えててね。」

カーテンを引かれたとき、強張った顔をしていたのだろうか。笑ったつもりなんだけど。私は、やっぱりちゃんと笑えてないんだろうか。

先生の気遣いに目頭が熱くなる。

「大学にいないこともあるけど、何かあれば、俺に連絡来るようにしてあるから。」

何かを言ったら涙がこぼれてしまいそうで、頷くことしかできない。私はこんなに簡単に泣くタイプではなかったはずなのに。

そして、最後に、

「何かあったら、メールして。」

とじっと見つめられる。

ぎこちなく頷く。

顔がどんどん赤くなる気がする。


< 118 / 331 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop