ダイヤモンドの未来
「救外(救急外来)で、診察させて。」

夜間の診察は救急外来で行われている。

「テーピング外しちゃったけど、歩けるかな?
車椅子必要なくらいだよね。
それとも、抱っこで行く?」

と、最後は笑いを含んだ声に問いかけられる。



抱っこ???

頬に熱が集まって来るのが分かる。

「大丈夫です、歩けます。」

慌てて言うと、一層下を向き、靴を履く。



レントゲン室を出て、先生とならんで歩き出す。

痛くて、ゆっくりしか歩けない。

「すみません、遅くて」

「さっきから、謝り過ぎ。
ゆっくりでいいよ。
手すりもつかまりな。」

院内には患者さんのために、廊下にも手すりが張り巡らされている。

勤務中は使いたくても使えないが、誰もいない。

手すりにつかまると、先生が隣で小さくうなずいた気配がした。



廊下をゆっくりゆっくり歩く。先生と…。








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